「Webexのビデオ会議データがCiscoのクラウドに保管されることに不安がある」「社内ネットワークだけで完結するビデオ会議環境を構築したい」「Webexオンプレミス版の導入を検討しているが、構成や要件がわからない」——こうした課題を抱えるIT部門の管理者やセキュリティ担当者は少なくありません。本記事では、①Webexオンプレミス版(Cisco Meeting Server)の仕組みと最新動向、②社内完結型ビデオ会議システムの構築で直面する3つの課題、③オンプレミスで会議データを完全に管理する3つの代替手段と具体的なステップを、2026年の最新情報を踏まえて徹底解説します。

Webexオンプレミス版(Cisco Meeting Server)とは?
Webexオンプレミス版とは、Ciscoが提供する自社データセンター内に設置可能なビデオ会議プラットフォームを指します。具体的には、Cisco Meeting Server(CMS)がWebexのオンプレミス対応製品として位置付けられており、会議の音声・映像・録画データを社内ネットワーク内で処理・保管できます。
2026年3月時点で、Cisco Meeting Serverはバージョン3.9系が最新リリースとなっており、SIP/H.323ベースのビデオ端末との相互接続、WebRTCによるブラウザ参加、録画サーバー統合、Active Directory連携といった機能を備えています。
オンプレミスとクラウドの違いを踏まえると、Webexオンプレミス版は以下のような組織に適しています。
- 官公庁・防衛関連:会議内容が機密情報に該当し、クラウドへの通信自体が制限される
- 金融機関:取引先情報や投資戦略に関する会議データの社外保管がコンプライアンス上許容されない
- 医療機関:患者情報を含む遠隔診療やカンファレンスのデータを院内に留める必要がある
Webexオンプレミス導入で企業が直面する3つの課題
課題1:会議データのクラウド保管によるセキュリティリスク
Webexのクラウド版は、Ciscoのグローバルデータセンターで会議データを処理・保管します。暗号化やISO 27001認証など高水準のセキュリティが確保されていますが、会議の録画データ・チャットログ・共有ファイルが自社管理外のサーバーに保管されるという事実は変わりません。オンプレミスのセキュリティを重視する企業にとって、経営会議や顧客情報を含むディスカッションの外部保管は、情報漏洩リスクの観点から許容しがたい問題です。特に2025年以降、各国のデータローカライゼーション規制が強化される中、会議データの所在地管理は一層重要になっています。
課題2:Cisco Meeting Serverの導入・運用コストの高さ
Cisco Meeting Serverをオンプレミスで運用するには、専用のハードウェアサーバー(Cisco UCS推奨)、ネットワーク機器、録画用ストレージ、冗長化構成の設計が必要です。オンプレミスサーバーの調達・構築に加え、Ciscoのライセンス体系(PMP: Personal Multiparty / SMP: Shared Multiparty)は高額であり、初期投資だけで数百万円〜数千万円規模になるケースが一般的です。さらに、Cisco専用の認定資格(CCNP Collaboration等)を持つエンジニアの確保も必要となり、中小企業にとってはハードルが高いのが現実です。
課題3:会議録画・議事録のナレッジ活用が進まない
オンプレミス環境でビデオ会議を運用しても、録画データや議事録が「保存されているだけ」で組織のナレッジとして活用されていないケースが多く見られます。会議の重要な決定事項や議論の経緯が、個別の録画ファイルに埋もれたままでは、後から情報を探すのに膨大な時間がかかります。オンプレミスでAIを活用することで、会議データを検索可能なナレッジに変換する仕組みが求められていますが、多くの組織ではこの統合が実現できていません。
社内完結型ビデオ会議を実現する3つの方法
オンプレミスでビデオ会議環境を構築するための代表的な手法を3つ紹介します。
| 方法 | 特徴 | 適した規模 | コスト感 |
|---|---|---|---|
| Cisco Meeting Server | Webexエコシステムとの高い互換性、SIP/H.323対応 | 大規模(500名以上) | ライセンス+専用HW費(高) |
| Jitsi Meet(OSS) | WebRTC完全対応、ブラウザのみで利用可能 | 小〜中規模(〜200名) | OSS無料、サーバー費のみ |
| BigBlueButton(OSS) | 教育・研修向け機能が充実、録画・ホワイトボード標準搭載 | 中規模(〜500名) | OSS無料、サーバー費のみ |
いずれの方法でも会議データを社内に留めることができますが、録画データや議事録をAIで自動要約・検索可能にするには、別途AIナレッジ基盤の導入が効果的です。
解決方法1:Cisco Meeting Serverを自社データセンターに導入する
Cisco Meeting Server(CMS)は、Webexのオンプレミス版として最もシームレスな選択肢です。既存のCisco Unified Communications Manager(CUCM)やCisco Expressway-Cと連携し、社内のIP電話やビデオ端末とワンタッチで会議に参加できる環境を構築できます。オンプレミス導入ガイドを参考に、以下の構成を設計します。
- サーバー:Cisco UCS C220 M7以上(仮想化環境の場合はVMware ESXi 7.0以降)
- 最小スペック:vCPU 8コア / メモリ16GB / ストレージ300GB SSD(〜100同時接続向け)
- 録画サーバー:Cisco Meeting Server Recorder(別途サーバーが必要)
- 冗長化:データベースクラスタ+Call Bridge冗長構成
CMSの導入後は、Web Admin UIからスペース(会議室)の作成、ユーザー管理、LDAP/AD連携の設定を行い、既存のWebex端末やSIPデバイスとの接続テストを実施します。
GBase OnPremで会議ナレッジのAI検索を実現する STEP
STEP 1:Cisco Meeting Serverで録画された会議データの文字起こしテキストや、手動で作成した議事録を、GBase OnPremのナレッジベースにアップロードします。Advanced RAG技術により、会議内容を自動的にチャンク分割・ベクトル化し、セマンティック検索を可能にします。
STEP 2:GBase OnPremのチャットインターフェースから「先月のプロジェクトAに関する決定事項は?」「クライアントXとの会議で合意した仕様は?」といった自然言語クエリで、過去の会議ナレッジに即座にアクセスできるようになります。会議録画を1本ずつ再生する必要がなくなり、意思決定のスピードが大幅に向上します。

GBase OnPrem なら、webex オンプレミスの課題を解決できます
解決方法2:Jitsi Meetでコスト不要のオンプレミスビデオ会議を構築する
Jitsi Meetは、完全オープンソースのWebRTCビデオ会議プラットフォームです。ブラウザだけで会議に参加でき、専用アプリのインストールが不要なため、社外パートナーとの会議にも柔軟に対応できます。オンプレミスのコストを最小限に抑えつつ、セキュアなビデオ会議環境を構築できる点が最大の魅力です。
Jitsi Meetの導入は、Docker Composeを使えば1台のLinuxサーバーに15分程度でセットアップが完了します。Ubuntu 22.04 LTS上での公式パッケージインストールにも対応しています。
- メリット:ライセンス費完全無料、E2EE(End-to-End Encryption)対応、モバイルアプリも提供
- 注意点:大規模会議(100名超)では、Jitsi Videobridge(JVB)の水平スケーリングが必要
GBase OnPremでJitsi会議の議事録をAI活用する STEP
STEP 1:Jitsi Meetの会議終了後に生成される録画データやチャットログを、GBase OnPremのナレッジベースにインポートします。議事録テンプレートを用意し、会議のサマリー・決定事項・TODO項目を構造化してアップロードすることで、検索精度がさらに向上します。
STEP 2:オンプレミス環境内で、GBase OnPremのRAGエンジンが蓄積された会議ナレッジを横断検索し、「このプロジェクトの進捗状況は?」「前回の会議で誰がどのタスクを担当することになった?」といった質問に、根拠付きの回答を生成します。

解決方法3:BigBlueButtonで研修・教育向けオンプレミス会議を構築する
社内研修、eラーニング、顧客向けウェビナーなど教育用途が中心の場合は、BigBlueButton(BBB)が最適な選択肢です。ホワイトボード、ブレイクアウトルーム、投票機能、共有ノートが標準搭載されており、オンプレミスのメリットを活かしながら高品質な研修環境を自社内で完結できます。
BigBlueButtonの主な特徴は以下の通りです。
- 教育特化機能:プレゼンテーションアップロード、多人数ブレイクアウトルーム、リアルタイム投票
- 録画・再生機能:会議を自動録画し、後からブラウザで再生可能(プレゼン資料同期再生対応)
- LMS連携:Moodle / Canvas / Sakai等の主要LMSとプラグインで統合可能
- API:REST APIで外部システムとの連携やカスタム会議UIの構築が容易
GBase OnPremで研修ナレッジを一元管理する STEP
STEP 1:BigBlueButtonで録画された研修動画の文字起こしテキスト、プレゼン資料、受講者からの質問ログを、GBase OnPremのナレッジベースに集約します。ファイルアップロード・API連携のいずれにも対応しており、研修コンテンツを体系的に蓄積できます。
STEP 2:GBase OnPremのチャットUIから、新入社員が「入社研修で説明されたセキュリティポリシーの内容は?」「前回のコンプライアンス研修の要点は?」と質問するだけで、過去の研修コンテンツから即座に回答が得られます。オンプレミス回帰のトレンドに沿った、セキュアかつ効率的な社内教育基盤を実現します。

Webexオンプレミス版と代替手段の比較表
| 比較項目 | Cisco Meeting Server | Jitsi Meet | BigBlueButton |
|---|---|---|---|
| ライセンス費 | 有料(PMP/SMPライセンス) | 無料(Apache 2.0) | 無料(LGPL) |
| 最小サーバー要件 | vCPU8 / 16GB RAM | vCPU4 / 8GB RAM | vCPU8 / 16GB RAM |
| 最大同時参加者 | 数千名(クラスタ構成) | 〜200名(JVBスケーリング) | 〜300名(推奨100名以下) |
| 暗号化 | TLS / SRTP | E2EE / OASE | TLS / SRTP |
| 録画機能 | 別途Recorderサーバー | Jibri(別途セットアップ) | 標準搭載(自動録画) |
| SIP/H.323対応 | 標準搭載 | Jigasi経由 | 非対応 |
| モバイル対応 | Webexアプリ | Jitsi Meetアプリ | ブラウザ対応 |
| 教育向け機能 | 限定的 | 基本機能のみ | ホワイトボード・投票・ブレイクアウト |
| 運用負荷 | 高 | 低〜中 | 中 |
よくある質問(FAQ)
Q1. Webex クラウド版とCisco Meeting Server(オンプレミス版)は併用できますか?
はい、併用は可能です。Cisco Expressway-CおよびExpressway-Eを中継装置として導入することで、社内のCMSとクラウド版Webexの間で相互に会議へ参加できるハイブリッド構成を実現できます。オンプレミスとクラウドの違いを理解した上で、機密性の高い会議はCMS、社外との一般的な会議はWebexクラウドと使い分ける運用が一般的です。ただし、Expressway等の中継機器の導入・管理が追加で必要になる点に注意してください。
Q2. Jitsi Meetのオンプレミス版で十分なセキュリティは確保できますか?
Jitsi MeetはEnd-to-End Encryption(E2EE)に対応しており、サーバー管理者を含め会議内容を復号できない構成が可能です。さらに、自社サーバー上で運用するため、通信データ・録画データが社外に出ることはありません。オンプレミスのセキュリティの観点からは、ファイアウォール設定でJitsi Videobridge用のUDPポート(10000)とTCPポート(443)を適切に管理し、Let’s EncryptまたはプライベートCA証明書でTLS暗号化を設定すれば、商用ソリューションと遜色ないセキュリティレベルを実現できます。
Q3. オンプレミスのビデオ会議録画データをAIで活用するにはどうすればよいですか?
オンプレミスの会議録画データをAIで活用する最も効果的な方法は、録画の文字起こしテキストをAIナレッジ基盤に投入することです。GBase OnPremを導入すれば、オンプレミス環境内で会議の文字起こしデータをRAG(Retrieval Augmented Generation)で解析し、自然言語で過去の会議内容を検索・要約できます。「先週の経営会議で決まった予算配分は?」といった質問に、AIが根拠となる会議録を提示しながら回答を生成するため、議事録の作成・共有コストを大幅に削減できます。
まとめ
Webexオンプレミス版(Cisco Meeting Server)は、ビデオ会議データを社内で完全に管理するための信頼性の高いソリューションです。しかし、導入・運用コストが高く、Ciscoの専門知識が必要となるため、すべての企業に最適とは限りません。Jitsi MeetやBigBlueButtonといったOSSの代替手段も含め、オンプレミスのメリットとデメリットを正しく比較した上で、自社の規模・予算・ユースケースに合った方法を選択することが重要です。
さらに、ビデオ会議のデータを「保存するだけ」で終わらせず、AIナレッジ基盤と連携させて組織の知的資産として活用することで、オンプレミスでのWeb会議の価値を最大化できます。
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